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大阪地方裁判所 昭和49年(ワ)2272号 判決

原告

赤松弘

被告

主文

被告は、原告に対し、金七三八、五四三円およびうち金六六八、五四三円に対する昭和四八年五月二二日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用はこれを一〇分し、その六を原告の負担とし、その四を被告の負担とする。

この判決は、原告勝訴の部分に限り仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

被告は、原告に対し、金二、〇七六、五五八円およびうち金一、八七六、五五八円に対する昭和四八年五月二二日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告の負担とする。

仮執行の宣言。

二  請求の趣旨に対する答弁

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

仮執行免脱の宣言。

第二請求原因

一  事故の発生

1  日時 昭和四八年五月二一日午後七時頃

2  場所 徳島県美馬郡半田町字東毛田五七番地先、国道一九二号線路上

3  被害車 普通乗用自動車(登録番号大阪五六す三四―八九号)

4  右運転者、被害者 原告

5  態様 原告が被害車を運転して西から東に向けて現場にさしかかつたところ、進路前方の道路が約二〇センチメートル低くなつた段差をなしていたため、これにのめりこみ、ハンドルの自由を奪われ、更に前方のくぼみや波状になつている路面に突つ込み運転の操作を過つて道路右端の訴外岡部政之助宅の石垣に激突した。

二  責任原因

1  被告は、右道路を所有し、その設置、管理をしていた。

2  右道路には次の瑕疵があり、そのため本件事故が発生した。

(一) 本件事故当時現場は、道路改築工事が完了している部分と未完の部分の境目付近で、現場西側(阿波池田市側)は工事が完了し、アスフアルトコンクリート舗装が施されており、東側(徳島市側)は未完で従来からの簡易(防じん)舗装が施されているにすぎず、そのつなぎ目は東側が西側に比してほぼ垂直に低くなつた段差を生じ、その高低差は一〇ないし三〇センチメートルにも及ぶほか、右の東側簡易舗装は厚さ約三センチメートルのアスフアルト舗装にすぎないから、激しい交通量と右の段差のため、右つなぎ目(後記のとおり被告は、つなぎ目は原告主張の場所から西方約二〇メートルの用水付近にあると主張する。)から更に東へ約八〇センチメートルの位置には、直径一メートル弱、深さ約三〇センチメートルのくぼみが数個あり、更にその東側約二メートルには二か所にわたつて道路と直角にいわば洗濯板状に波状の凹凸や縦、横二〇ないし三〇センチメートル、深さ五センチメートル位のくぼみが無数にあるのみならず、轍による隆起や降雨による陥没など路面の凹凸が激しい悪路であつた。

(二) 右のほか、現場付近の本件道路は全体的に観察しても、西から東に向つてまず右に、ついで左に、更に右にと蛇行する入口付近にあたり、その直近右側には建造物が建ち、道路幅も歩車道の区別のある八・九メートルからそれのない五・九メートルへと五割以上も狭隘となるなど、見通しが悪く複雑な状況にあるにもかかわらず、前方が前記のような悪路であるとの標識や、現場道路北端に転落防止のためのガードレールがないのは勿論、夜間照明の街灯もなく、「工事中徐行運転」、「道路幅員狭小」等の運転者に安全運転の注意を喚起する一切の標識、設備のない欠陥道路であつた(因みに、本件事故前後、被告において道路のつなぎ目付近のくぼみに始終アスフアルト合剤を補填し、ことに事故後は、現場付近に「道路幅員狭小」と「工事中徐行」とそれぞれマークや文字を大書した標識、街灯、現場道路北端にガードレールをそれぞれ設置し、また、最高速度を時速三〇キロメートルに規制しその旨の標識を設置した。)

三  損害

1  受傷、治療経過等

(一) 受傷、左鎖骨々折

(二) 治療経過

入院

昭和四八年五月二一日から同月二二日まで(二日間、半田病院)

昭和四八年五月二三日から同年八月三一日まで(一〇一日間、生井診療所)

通院

昭和四八年九月一日から同年一〇月一八日まで(実診療日数一五日、生井診療所)

昭和四八年九月五日から同年一一月一〇日まで(実診療日数五〇日、神原接骨院)

2  治療関係費 合計一六九、二三七円

(一) 治療費 小計一二六、七三七円

(1) 半田病院分 七、七五五円

(2) 生井診療所分 一〇九、八七二円

(3) 神原接骨院分 九、一一〇円

(二) 入院雑費 二一、〇九〇円

(三) 入院付添費 一四、四〇〇円

原告は、その前記入院期間のうち、一二日間付添看護を必要とし、その間妻が付添つたから、一日一、二〇〇円の割合による合計一四、四〇〇円相当の損害を被つた。

(四) 付添交通費 七、〇一〇円

原告の妻が、原告を事故発生地の徳島から住居地の大阪まで付き添つて連れ戻し、原告は、その往復旅費として右金額を出捐した。

3  休業損 五一二、九八一円

原告は、事故当時四〇才の健康な男子で、建具職人として生計を立てていたものであり、事故前三か月は一日平均三、八五七円の収入を得ていたが、本件事故により昭和四八年五月二一日から同年九月三〇日までの一三三日間休業を余儀なくされ、その間五一二、九八一円の収入を失つた。

4  慰藉料 八〇〇、〇〇〇円

原告は、本件事故により、前記のとおり傷害を被り、長期間治療のため入通院生活をおくり、生業を休まざるを得なかつたもので、その肉体的、精神的な苦痛は甚大である。

5  物損 合計三九四、三四〇円

(一) 車両修理費 二八八、〇〇〇円

本件事故により、被害車両は破損し、原告は、その修理費として右金額の出捐を余儀なくされた。

(二) 車両引揚費 六、三四〇円

原告は、事故による受傷のため、被害車を運転してこれを持ち帰ることができなかつたから、妻が住居地の大阪から事故発生地の徳島まで引き取りに行つたため、原告はその往復旅費を出捐した。

(三) 訴外岡部政之助宅の修理費 一〇〇、〇〇〇円

原告は、被害車を訴外岡部宅の石垣に激突させ、同人宅の石垣、水道管および倉庫等の一部を破損させ、その修理費として右岡部に一〇〇、〇〇〇円を支払つて弁償し、これと同額の損害を被つた。

6  弁護士費用 二〇〇、〇〇〇円

以上のように、本件事故は、被告の道路の設置、管理の瑕疵により発生したものであることは明らかであり、被告は原告が被つた右損害を賠償する責任があるのにこれを果たさないので、原告は、弁護士に依頼して本件提訴に及ばざるを得なくなり、着手金として五〇、〇〇〇円を既に支払い、将来成功報酬として一五〇、〇〇〇円を支払う約束のもとに提訴と訴訟遂行を委任した。

四  本訴請求

よつて、請求の趣旨記載のとおりの判決(遅延損害金は民法所定の年五分の割合による。但し、弁護士費用に対する遅延損害金は請求しない。)を求める。

第三請求原因に対する被告の答弁

一の1ないし4は認め、5のうち原告が事故車を運転して西から東に現場にさしかゝつた点、原告がハンドル操作を過つて道路右端の訴外岡部宅の石垣に激突した点は認め、その余は争う。

二の1は認め、2のうち改築工事の完了した西側はアスフアルトコンクリート舗装が未完の東側は簡易舗装がされていた点本件事故現場付近に街灯がなかつた点、制限速度の標識、路面凹凸の標識が設置されていなかつた点、原告主張の部分にガードレールがなかつた点は認め、その余は争う。現場の道路状況は次のとおりで被告に管理上の瑕疵責任はない。

右工事の完成部分と未完部分の高低差は五八・九センチメートルで、被告は、完成部分と未完成部分とのつなぎ目(用水付近)を起点として東方へゆるやかな傾斜をつけてアスフアルトによる坂状の摺りつけをなした。従つて、段差は存在しない(原告が段差があつたと主張する場所〔右つなぎ目から二〇メートル東の地点〕は、右の摺りつけの終了点より更に東側にあつて未改良工事区域内で、そこには段差の生じる余地はないし、凹凸も存在しない)。右摺りつけ自体は車両の通常の通行に何らの支障を及ぼすものではなく、また、右摺りつけ部分に多少の凹凸があるとしてもそれは通行車両の重量によるくぼみ程度の極めて軽微なもので、通行車両の運転者がこれに左右されるものではない。

なお、明かるさと見通しとは別個の問題であり、現場付近は必ずしも見通しが悪くはなく、また本件事故は原告主張の場所にガードレールが設置されていなかつたことに起因したものではないから、照明設備や防禦壁設備等の不備と事故発生との間に因果関係はない。更に、道路幅員の狭小は、かねて原告において知悉していたものであるから同様に因果関係はない(もつとも、摺りつけ部分の西端から西方約五〇メートルの地点に幅員狭小を示す標識はあつた。)それに、最高速度の規制とその標識の設置は公安委員会の所轄に属するものであつて、道路管理者たる被告の権限外の事項である。

三の1の(一)および5の(三)のうち、原告が被害車を訴外岡部宅の石垣に激突させたことは認め、その余は不知。

第四被告の主張

過失相殺

仮りに本件道路に瑕疵があり、従つて、被告に道路管理上の瑕疵があるとされ、かつ、右管理上の瑕疵と本件事故との間の因果関係が肯認されるとしても、本件道路の瑕疵は極めて軽微であるのに比し、原告の次に述べる過失は極めて重大であるから、損害賠償額の算定にあたり、大幅な過失相殺がなされるべきである。

すなわち、原告は、本件事故発生のわずか二日前に被害車を運転して事故現場を東から西に通行しており、現場付近の道路状況を十分知悉しているはずであるから、路面が原告の主張するような状態であるならば、自動車運転手としては当然に減速措置を採るべきことが安全運転義務の内容として要請されているのに、これを怠つて被害車を運転して漫然と時速六〇ないし七〇キロメートルあるいはそれ以上の高速で西から東に向けて本件現場を通行したものであるから、原告には、前方を注視せず、減速すべきであるのに減速しなかつた過失がある。

第五被告の右主張に対する原告の答弁

被告の主張は争う。

第六証拠関係〔略〕

理由

第一事故の発生

請求原因一の1ないし4および5のうち道路状況を除く事故態様は当事者間に争いがなく、道路状況については次の第二で認定するとおりである。

第二責任原因

一  道路の設置、管理者

請求原因二の1は当事者間に争いがない。

二  道路状況

成立に争いのない乙第一、二号証、乙第三号証の三、乙第五号証、証人正木清美、同正木利進、同佐藤弘、同吹田徳雄の各証言の各一部、同岡部政之助の証言、原告赤松弘本人尋問の結果の一部、現場検証の結果を総合すれば、

1  現場付近の国道一九二号線はほゞ東西に走り、西は阿波池田市、東は徳島市に通じており、事故当時は改築工事中で、西側へは、既に工事が完成して歩車道の区別のある幅員約八・九メートルのコンクリートアスフアルトによる本舗装のなされた道路が延び、東側へは、未だ工事が完成しておらず歩車道の区別もなく幅員も約六・八〇メートルのアスフアルトで防じん(簡易)舗装がなされたにすぎない道路が延びこの両者が現場付近で接続していたこと

2  右の接続部分から約九〇メートルにわたつて、右の本舗装道路の南側に接して旧道が西に延び、それ以西では旧道は本舗装道路から分岐しているが、その間旧道にはその南端に幅員約一・五メートルの歩道が付設されているので、接続部分より西側約九〇メートルの部分はかなり広い道路敷地となつていること

3  本件国道は西から東に向かつて、接続部分でやゝ右(南)に向かつてわん曲しており、しかも同所付近の道路南側には数軒家屋が立ち並んでいるが、昼間の西から東への見通しは必ずしも悪くはなく、たゞ夜間は付近に街灯等の照明設備がなかつたため(街灯のなかつたことは当事者間に争いがない。)暗かつたこと、標識等による格別の速度制限はされていなかつた(政令で定める時速六〇キロメートルの規制による。)こと

4  右の本舗装と簡易舗装との接続部分は、被告主張のとおりの場所(当裁判所の検証調書現場見取図(一)のB)であるが、同所では本舗装(西側)部分が五八・九センチメートル高いので、この段差を解消するためアスフアルトによる摺りつけがなされていたこと

5  しかしながら、その摺りつけ工事は必ずしも完全ではなく、降雨や激しい交通量により、しばしば路面に轍やくぼみを生じ、そのため管轄の脇町土木事務所で時々アスフアルト合剤を補填してこれを補修していたこと

6  ところが事故時には、本舗装と摺りつけ部分の接触面に急激な段差があつて、引き続いて摺りつけ部分がくぼんでいたために本舗装の路面との差が最大で約二〇センチメートルにもなる段差が生じており、そのほか摺りつけ部分には縦横二〇ないし三〇センチメートル位、深さ五ないし一〇センチメートル位のくぼみが随所に存在し、更には道路と直角に全幅員におよぶいわば洗濯板状の波状の凹凸が二か所あるなど路面はかなり荒れていたこと(原告主張の場所にその主張のごとき段差、凹凸等があつたことは認められない。)

それにもかかわらず、現場近辺には、前記路面の段差や凹凸の存在による危険につき車両運転者に注意を喚起するに足る標識等は何ら設置されていなかつたこと(路面凹凸の標識のなかつたことは当事者間に争いがない。)

7  原告は、大阪から高知へ行くため事故の二日前の夜、被害車を運転して東から西に向け現場を走行していて、前述の幅員の変化は覚えていたが、その際は交通渋滞による徐行のため右の路面の段差や凹凸は印象に残つていなかつたこと

8  原告は、事故当時被害車を運転して大阪へ帰る途次時速約五、六〇キロメートルで西から東へ現場を通過しようとしたが、その際、前方を十分に注視せず、漫然とそのまゝ進行を続けたため、右の段差にハンドルをとられ、ついでくぼみや波状の凹凸のために運転操作の自由を失い、直ちに急制動の措置を採つたが間にあわず、道路右端にある訴外岡部政之助宅の石垣に被害車を衝突させたこと

以上の事実が認められ、成立に争いのない乙第三号証の二、証人正木利進、同正木清美、同佐藤弘、同吹田徳雄、同岡部弁吉の各証言、原告赤松弘本人尋問の結果中右認定に添わない部分はにわかに措信し難く、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

右によれば、本件事故当時現場付近の国道一九二号線には段差、凹凸等があつて、車両の通行に危険を生ぜしむる慮がある状態にあつたものであり、しかも右危険につき、車両運転者に注意を喚起するに足る標識等の設備は何ら設けられていなかつたのであるから、本件道路には瑕疵があつたものといわざるをえず、かつ、右の瑕疵と本件事故の発生との間には十分に因果関係があるから、被告において原告の被つた本件事故による損害を賠償すべき責任がある。

第三損害

一  受傷、治療経過等

1  受傷

請求原因三の1の(一)の事実は当事者間に争いがない。

2  治療経過

証人赤松美津子の証言によつて真正に成立したと認められる甲第二号証の一ないし三によれば、請求原因三の1の(二)の事実が認められる。

二  治療関係費 合計一六五、五三七円

1  治療費 一二六、七三七円

証人赤松美津子の証言によつて真正に成立したと認められる甲第五号証の一ないし一一によれば、請求原因三の2の(一)の事実が認められる。

2  入院雑費 二一、〇九〇円

証人赤松美津子の証言によつて真正に成立したと認められる甲第六号証、および甲第七号証の一ないし七によれば、請求原因三の2の(二)の事実が認められる。

3  入院付添費 一三、二〇〇円

証人赤松美津子の証言とこれによつて真正に成立したと認められる甲第四号証、前掲甲第二号証の一に先きに認定した原告の受傷の内容程度を考えあわせると、前記入院期間中一一日間妻が原告の付添看護(これは必要であつた。)をしたことが認められるところ、経験則によれば、これにより原告はその間一日一、二〇〇円の割合による合計一三、二〇〇円の損害を被つたことが認められる。右金額を超える分についてはこれを認めるに足りる証拠はない。

4  付添交通費 四、五一〇円

原告の受傷の内容、程度は先きに認定したとおりであり、証人赤松美津子の証言とこれによつて真正に成立したと認められる甲第一〇号証によれば、三の2の(四)の事実が認められるが、原告はもともとその住居地に帰るのであるから、七〇一〇円から同号証によつて算出しうるその交通費二五〇〇円を差し引いた四五一〇円をもつて原告の被つた損害とみるべきものである。

三  休業損 五一二、九八一円

原告赤松弘本人尋問の結果とこれによつて真正に成立したと認められる甲第八、九号証によれば、請求原因三の3が認められる。

四  慰藉料 六〇〇、〇〇〇円

本件事故の態様、原告の傷害の部位、程度、治療の経過、その他諸般の事情を考えあわせると、原告の慰藉料額は六〇〇、〇〇〇円とするのが相当であると認められる。

五  物損 合計三九二、八四〇円

1  車両修理費 二八八、〇〇〇円

証人赤松美津子の証言とこれによつて真正に成立したと認められる甲第一三号証、第一四号証の一ないし三によれば、原告は、本件事故によるその所有の被害車破損の修理費として右金額を要したと認められるから、右相当の損害を被つたことになる。

2  車両引揚費 四、八四〇円

証人赤松美津子の証言とこれによつて真正に成立したと認められる甲第一一号証によれば、請求原因三の5の(二)の事実が認められるが、被害車はもともと原告の住居地まで運んで帰るのであるから、六三四〇円から同号証と前記甲第一〇号証によつて算出しうるそのための費用一五〇〇円を差し引いた四、八四〇円をもつて原告が被つた損害というべきである。

3  訴外岡部政之助宅の修理費 一〇〇、〇〇〇円

被害車が訴外岡部政之助宅の石垣に激突したことは当事者間に争いがなく、証人岡部政之助の証言とこれによつて真正に成立したと認められる甲第一六号証、証人赤松美津子の証言によれば、右激突の結果、訴外岡部政之助宅の石垣、水道管および倉庫の一部が破損し、原告はその修理費として同人に一〇〇、〇〇〇円を支払つて弁償したことが認められるから、これと同額の損害を被つたことになる。

第四過失相殺

前記第二認定の事実によれば、本件事故の発生については原告にも、前方を十分注視せず、漫然進行した過失が認められるところ、前記認定の本件道路の瑕疵の態様等諸般の事情を考慮すると、過失相殺として原告の損害の六割を減ずるのが相当と認められる。そして過失相殺の対象となる原告の損害額は以上の合計一、六七一、三五八円であるから、これを過失相殺すると、六六八、五四三円となる。

第五弁護士費用 七〇、〇〇〇円

本件事案の内容、審理経過、認容額等に照らすと、原告が被告に対して本件事故による損害として賠償を求め得る弁護士費用の額は七〇、〇〇〇円とするのが相当であると認められる。

第六結論

よつて、被告は、原告に対し、七七八、五四三円およびうち弁護士費用を除く六六八、五四三円に対する本件不法行為の日の翌日である昭和四八年五月二二日から支払済まで年五分の割合による遅延損害金を支払う義務があり、原告の本訴請求は右の限度で理由があるからこれを認容し、その余の請求は理由がないから失当として棄却することゝし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、仮執行の宣言につき同法一九六条を各適用して、主文のとおり判決する。

なお、仮執行免脱宣言は相当でないからこれを付さない。

(裁判官 鈴木弘 丹羽日出夫 山崎宏)

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